
今回の納品事例はリメイク案件です。
大きなテーブルの天板をカットして2つの小さなテーブルを作るということは今まで何度かありましたが、
今回は天板を2分割スライスして薄くて軽いテーブルを2つ作りました。
今ある座卓を軽くできないかとお電話にてお問い合わせがあったN様。
近場でしたし、とにかく今あるテーブルの現物を見ない事には加工できるかどうかもわからないのでお家に伺うことになりました。
上の写真はN様宅から当店工房に運び出した当時のものです。
N様が奥様と北海道旅行に行かれた際に購入されたものだそうで、ニレの埋もれ木(神代木)と言うことでした。
そしてN様としては、この座卓を2枚に割って2つの同じくらいの大きさの座卓を作ってほしいとの事。
厚みは7センチほどでずっしりと重みがありますが、捻じれと反りが生じています。
これを2枚にスライスして反りと捻じれを削って取るとかなりの薄物になってしまいます。
一枚板は薄くなればなるほど反りのリスクが高くなるため、スライスしたところで2枚とも使い物にならなくなってしまう可能性が高いと思いました。
そして気になるのは色…
どうも着色してあるようなんですよね。
スライスした際に本来の木の色が出てくるのは明白で、
購入された時の印象とかなり変わってしまうかもしれません。
そして、大変失礼なことを承知で「神代(埋もれ木)じゃない可能性も幾分かあります」ともお伝えしました。
正直なところ、この案件を受けることにはあまり乗り気ではありませんでした。
重いテーブルを軽くするのであればクセの強い芯側を捨てて5センチほどの厚みにすれば確実ですし、
2つのテーブルにするのであれば、カットして短いテーブルにする方法もあるとお伝えしたのですが、
「どうしても2枚にスライスして作って欲しい」との事でした。
リスクについて十分に説明させていただいたのと、リスクに際する費用負担についてもご了承いただきましたので
特別に
お受けすることになりました。
当店ではこれだけの天板をスライスする設備がないので、あらかじめクセを削って直した天板を製材所に持ち込んでスライスしてもらいました。
結果はこれ以上ないくらいにうまく行きました!
そしてスライスしてわかったのは神代木で間違いない事。
神代特有の灰褐色が出てきてくれました。
ここに来てようやく説明ですが、神代木(埋もれ木)というのは、倒木が火山灰や土砂に埋まって腐らずに数百〜一千年ほど経ち、現代になってから掘り起こされた希少価値のある材です。
長い年月埋もれている間に木の組織が変性し灰~黒褐色で芯まで染まっているのが特徴です。
薄く軽く、そして神代本来の色を取り戻した天板をご覧いただき大変満足していただいたようでした。
ご希望により脚はシンプルな4本脚タイプでこちらも軽量化に寄与しています。
奥様との思い出と共にいつまでも大切にしてくださいね。
いつもありがとうございます。